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華藤えれな『欲望と純潔のオマージュ』

欲望と純潔のオマージュ (ダリア文庫)欲望と純潔のオマージュ (ダリア文庫)
(2009/08/13)
華藤 えれな

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華藤先生の『欲望と純潔のオマージュ』の感想。いや~、泣けた!
華藤先生お得意のメロドラマ仕様。舞台は共に古都である京都とプラハ。そこで展開するすれ違い、命を懸けた恋、狂気の愛。さらに健気+不幸受け。メロドラマの要素がこれでもかという位ふんだんに盛り込まれていますね。

帯は「君の手でオレを美しい亡骸にして」。なんとも華藤作品らしいこの言葉。これで即買いでした。以前読んだ『シナプスの柩』の「死んだらこの指で解剖してください」というセリフとちょっと重なりました。

カレル・バロシュ(天才彫刻家)×八幡蒼史(芸術大学職員) 年下攻め

以下、ネタバレありですよ~。
著名な陶芸家である母とイタリア人留学生の間に私生児として生まれた蒼史。母は、留学生に捨てられたことによって精神を病み、蒼史は、物心付いたときから、そんな母のために生きることを義務付けられてきました。それゆえに、蒼史は、自己主張することなく、自分のために何かを望むこともせずに生きてきたのです。生い立ちゆえに己の幸せを望むことができない蒼史の姿があまりにも悲しい。

そんな彼がチェコからきた留学生で天才芸術家のカレルと恋に落ちます。すべてを諦めて生きてきた蒼史の初めての恋でした。蒼史の背景を知らないカレルは、自分を殺して「死んだように」生きている蒼史の心を解放しようとします。そして、蒼史はカレルの情熱を受け入れ、自分の生き方を変えるべく、カレルと共にプラハへ行くことを決意しますが、それは、カレルの帰国前夜に起きた事件により叶わなくなります。

生まれて初めて望んだ恋さえも砕かれてしまい、愛する人を裏切ってしまった。多分忘れてしまった方が楽になれる。だけど、蒼史には、カレルの存在を忘れ去ることはできませんでした。別れて4年後、蒼史は、芸術祭でグランプリを受賞したカレルの個展を見るため、駆り立てられるようにプラハへとやって来ます。 

さて、個展で蒼史が目の当たりにしたのは、「美しき亡骸」と題され、自分の姿を象った彫像。生が通っておらず、自分への憎悪を滲ませた作品に蒼史は愕然とします。そして、カレルとの運命の再会。カレルにとって蒼史の裏切りは、初めて味わった挫折で、ようやくそこから立ち直ったと思った矢先の再会だったんですね。蒼史に対して怒りを露にするカレル。裏切ったことへの償いをしたいと申し出る蒼史にカレルは自分の創作のモデルになるよう命じます。病に冒され、残された時間が少ない蒼史は、その申し出を受け入れ、命がけでモデルを務めることを決意します。

2人きりのアトリエという閉ざされた空間でストーリーが進行していきます。互いに相手の存在しか目に入らない。しかし、互いの心を交えようと会話するシーンはほとんどありません。本当に静謐な沈黙の世界。蒼史の「亡骸」を創り上げたことで挫折を克服したと思っていたカレルは、今更自分の前に姿を現した蒼史に戸惑い、苛立ちを覚えています。一方の蒼史はカレルに許してもらおうと思っていないから、真実や本音を全く語らない。蒼史にあるのは、己の命が無に帰す前に、愛する人間の手によって永遠に彫像の中に自分の魂を閉じ込めて欲しいという願いだけ。 

「もうすぐ、この世界から消えようとしている・・この顔と身体が、カレルによって作品として新たに創られてゆく・・そして自分の魂ごと、その器に入れて封じ込めて欲しいと切に願う・・」(本文より引用)。

蒼史の愛は狂気にも近いですね。彼にとってはカレルが絶対的な存在。二人きりの世界でカレルの手が自分の姿を創りあげていく過程を眺めることに至上の喜びを感じている。そんな蒼史の願いに究極のエロスを感じました。この人はずっと抑圧されてきただけで、本質的には強い情念を秘めているのだと思います。

華藤作品でしばしば見られる倒錯的な愛の表現が本作でも存分に生きています。カレルが蒼史に石膏を塗りこめていく場面は圧巻!この場面は二度出てくるのですが、同じ行為でもそこに漂う空気が全く違うんですよ。この対照がいい。

一度目の場面では、正気を失ったように「かけて…」(石膏をですよ、念のため)と懇願する蒼史の姿に胸が痛くなります。ずっと自分の気持ちを押し殺してきた蒼史の切実な願いが吐露され、でもその意味が分からないカレルは苛立ち、混乱してしまう。未だ噛み合わない二人。蒼史の切実な叫びも相俟って、悲劇性を醸し出しています。

二度目の場面では、蒼史の命を懸けた願いを知ったカレルが、蒼史を生かしたい、自分の手で生命力に満ちた蒼史の彫像を創りたいう祈りを込めて創作に打ち込み、カレルの作品は生の輝きを取り戻して行きます。そして、蒼史の表情もまた満ち足りた、生き生きとしたものになっていく。切ないんだけど、幸福感が漂っていてすごく好きな場面です。

カレルのイメージは前半と後半でガラッと変わりますね。前半京都に留学中のカレルは、いかにも天才肌といった鷹揚さが目だっていました。だけど、後半蒼史と再会してからは一転、青さ・未熟さを露呈してくれます。蒼史の心が見えなくて、混乱し、そのために冷たく接してしまう。こういう余裕のない年下攻めは大好き。蒼史の狂気を目の当たりにして逃げ出すヘタレっぷりもいい(褒めてるのか?)。カレルは、昔も今も蒼史だけが好きなんです。苛立ちや怒りは愛の裏返し。だから、冷酷にはなりきれないんですよね。基本的にとっても一途な人だと思います。ラストでの愛の告白には感動した!

読み終わって、色々な意味で死と再生の物語だったんだなあと気付きました。カレルの作品は、蒼史を取り戻したことで再生する。そして、蒼史はといえば、やはりカレルの愛と祈りによって生かされたのだと思います。

読んでいて途中、これは本当にハッピーエンドになるの!?とドキドキしましたが、書下ろしでは、甘々の二人の幸せな姿を拝めてホッとしました。
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テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

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