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いつき朔夜 『八月の略奪者』

いつき朔夜先生の『八月の略奪者』の感想です。すごく面白かった!略奪者と書いて「ラプトル」と読みます。この感想も以前ちるちるさまに投稿したレビューを修正したものです。

八月の略奪者(ラプトル) (ディアプラス文庫)八月の略奪者(ラプトル) (ディアプラス文庫)
(2006/11)
いつき 朔夜

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それは高校三年生の夏、思いがけず見つけた運命だった―。校外見学でやってきた博物館で、アンモナイトの化石を割ってしまった浩紀。だが、いつものように適当に流そうとした浩紀を、学芸員の香月は本気で叱った。真面目で融通がきかない彼に反発を覚える浩紀だったが、博物館に通いつめるうちに、博識で可愛いところのある年上のひとにいつしか惹かれてゆき…。きらきら眩しいティーンエイジ・グラフィティ。(裏表紙あらすじ)
「八月の略奪者」「十二月の暴君」

椋本浩紀(高校生→大学生)×香月草一(博物館学芸員) 6歳差

年下攻めです。年上の受けが年下の彼を育てていくお話。大好物の育成ものでした。私、攻めが受けを育てる話も好きなんですが、受けが攻めを育てる話にも非常に萌えのツボを刺激されるんですよね。特に本作のような、単に自分好みに育てるんじゃなくて、相手の才能とか美点を引き出し、伸ばして、相手の成長を助けるという話にとても惹かれます。
主人公、浩紀はやりたいことが見つからず、「どうでもいい」が口癖の高校生。自分で自分のことが分からなくなる少年期の苛立ちがよく伝わってきます。そんな彼が真面目で博学、そしてちょっと可愛いところのある学芸員、香月との出会いによって成長していく過程を描いた本編。浩紀の少年から大人へと成長していく姿がとても自然に、瑞々しく描かれていたのが良かったです。

「青春」という言葉は美しく響きますが、実際、その只中にいる時は、やりたいことが見つからず進む方向が見えなかったり、周りの目を気にして、あるいは照れくさくて自分をさらけ出せなかったりと常に迷いが付いて回りますよね。

香月は、浩紀が周りの目を気にするあまり、あえて抑制してしまっている才能や美点を引き出して行きます。嫌々ボランティアを始めた浩紀が、徐々に生き生きと仕事に取り組み、香月に惹かれていく様がとても素敵。

本編は浩紀の視点で進んでいくので、香月の気持ちが見えにくいところもありましたが、浩紀が隠していた優しさに惹かれたであろうことは想像に難くありません。「そうか。優しいのは秘密なんだね」という香月のセリフが好きです。この作品は、こういうさりげない言い回しが随所で光ってますね。

何事にも本気になれなかった浩紀が、いざ香月に夢中になると愚直なまでに突き進むのに対し、出会った時は、本気で浩紀を叱った香月が浩紀の想いをはぐらかし、臆病さを見せるあたりは、少年の一途さと大人の狡さや脆さが対照的に描き出されていて、切なくなりました。 

三年後の二人を描いた「十二月の暴君」は、香月の視点で話が進んで行くので、さらに香月のネガティブさや脆さが際立ってくる感じです。ゲイである香月は、自分の存在が浩紀の人生の可能性を狭めてしまうとして浩紀を解放しようと考えを巡らせます。だけどそれは建て前にすぎません。実際のところは、捨てられ、傷つくのが怖いから、捨てられる前に自分から手放そうとする。香月は、傷つくのが怖くて、常に最悪の事態を想定して生きている人なんでしょうね。そんな香月の殻を破ったのは「大人の男」に成長した浩紀の一途で包み込むような愛情でした。香月からすると、自分が育てたと思っていた相手が、実はもうとっくに自分の手から飛び立っていた。どっしりと落ち着いた大人の男に成長し、自分を守ってくれていた。

この「育てた側がいつしか守られていた」という関係の転換がドツボでした♪育てる側は、相手が成長していくのを見守りながら、切なさと不安を抱くわけです。だけど、浩紀は香月から離れるのではなく、香月を守っていた。そのことが明らかになるシーンが、私にはたまらなく感慨深かったです。これぞ育成ストーリーの醍醐味!

というわけで、恋愛を通して自己を形成していく浩紀の姿が核になった、読んでいてすごく気持ちが温かくなる作品でした。主人公の精神的成長を主題的に描くあたり、いわゆる「教養小説」(ヘッセの作品のような)の香りがする作品だなあと思いました。こういう小説は、もっと若い頃だと浩紀に自分を重ねて感情移入しながら読んだと思うのですが、アラサーになった今では、浩紀の成長を見守るという若干距離を置いた視点から読むようになったなあ、とそんなとりとめのないことを考えてしまいました。まあそれだけ年を取ったということで。

いつき先生の作品を読むのはこれが始めてだったのですが、これを機に他の作品も読んでみたいと思います。
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テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

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