スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

英田サキ 『すべてはこの夜に』

英田先生の『すべてはこの夜に』の感想です。これは、ボーイズラブ専門書評サイトちるちる様に投稿したレビューを加筆・修正したものです。

すべてはこの夜に (クロスノベルス)すべてはこの夜に (クロスノベルス)
(2007/10)
英田 サキ

商品詳細を見る


選ばせてやるよ―このまま撃たれて死ぬか、俺に縋って土下座で許しを乞うか」平凡な生活から一転。熾烈な借金地獄に堕ちた加持に残された道は『ある男を撃つ事』。だが、狙いを定めた先に現れたのは、忌まわしい過去の男・湊だった。端整な顔立ちの男は十年の時を経て、冷酷な雰囲気を纏う極道になっていた。そして、捕らわれた加持は凌辱されてしまう。与えられる痛みの中に昔と変わらぬ執着の色を感じた加持は戸惑い…。 (裏表紙あらすじ)

「すべてはこの夜に」「夏の花」「春宵一刻」という三つのお話から構成されます。

「すべてはこの夜に」「春宵一刻」
湊彰彦(ヤクザ)×加持智充(元喫茶店経営)元同級生
「夏の花」
武井靖之(ヤクザ)×鈴原亮一(中学教師・武井の姉の夫)年下義弟攻め
夜や闇を描く英田作品。舞台設定がアンダーグラウンドな世界であることもさることながら、皆が痛みや悲しみ、罪など光の下にさらけ出せない部分を心の内に抱えていることが、その醍醐味だと思います。この作品も、英田作品の例に漏れず、暗さや重さが際立っているように思いました。

借金を抱え、拳銃である人物を傷つけるという仕事を請け負った加持。拳銃を持って出向いた先で出会ったのは、因縁ある男、湊でした。結局、湊を傷つけるという仕事は失敗に終わり、加持は湊によって監禁・陵辱されてしまいます。英田先生が描かれる受けは、「脆さを抱えながらも強くあろうとする」というイメージがあったので、加持のような恐怖から土下座するわ、失禁するわ、という情けない受けは新鮮でしたね~。 クールビューティーはどこに!?と思ってしまいましたw

一方、攻めの湊は、ヤクザですが、これが冷酷に見えて、実は不器用な健気攻め。これが奥深いキャラでよかった。彼の愛は歪んでいます。自分の存在を加持の心に刻み込むために、あえて憎しみを植えつける。「忘れられるくらいならば、いっそ憎まれていたい」と。

ここでふと「愛の反対は憎しみではなく無関心」という言葉を思い出しました。愛される、憎まれることは、相手の心の中で自分の存在が大きな位置を占めているということであり、そういう意味で、愛と憎しみは関心の度合いにおいて、同一線上にある。対して無関心や忘却は、相手の心の中に自分が存在する場所がない。二人は学生時代に付き合っていた時、お互い相手を愛していたのに、どちらも「相手の中に自分の存在はない」体だけの虚しい関係だと認識していたんですね。このすれ違いが痛々しい。そこに加持の恋人の不幸な出来事が絡み、その出来事について語った湊の言葉を信じた加持は湊を憎むことになるのです。

監禁という形で同居するようになった二人ですが、過去を忘れ去りたい加持とそれを許さない湊は平行線のまま。ですが、監禁は実は加持の身を守るためで、湊が加持を大事に思っていることがよく伝わってきます。このあたり、湊がすごくいじらしくて可愛らしいです。部下にも気づかれちゃって(肝心の加持には気付いて貰えないところがかわいそう)。そして、湊が属する組で内部抗争が起こり、緊迫感が増す中、やがて過去の真相が明らかになって…。

えっと、この表題作、とんでもないところで終わります。私は「ちょ、ちょっとここで終わり!?」とパニックになり、すぐに真ん中の「夏の花」を飛ばして、続きの「春宵一刻」へと進んでしまいました。この出だしにもドキッ。英田先生、心臓に悪いですよ~(泣)。これからお読みになる方はどうぞご覚悟を。

さて、「夏の花」では、本編で示唆されていた、湊の側近である武井の過去の恋愛が描かれます。私は、こちらの方がより琴線に触れました。武井と彼の亡き姉の夫である鈴原、痛みを持つ者同士が求め合っていく様が静かに展開して行きます。「すべてはこの夜に」がドラマティックな「動」であったのに対し、こちらは「静」。両者の対照が見事です。大きな事件が起きることもなく、淡々と描かれる中に、そこはかとなく切なさやはかなさが漂う。二人の抱える痛ましい過去といつか来る終焉の予感がそうした雰囲気を作り出しているのでしょう。二人の間に流れる時間がとても好きです。終わりがあるからこそ、一瞬の中に永遠を凝縮しようとしているかのようで。唯一人大切だった存在を失った二人が、あたかも互いに半身を求め、一瞬一瞬のめり込むかのように愛し合う姿に心を打たれました。

最後の「春宵一刻」において、「すべてはこの夜に」と「夏の花」の帰結が判明します。「夏の花」の帰結には切なくなるけれど、武井の心が、喪失感よりも、幸せな思い出に満たされていることに救われます。

冒頭にも述べたように、全体的に暗く、重い雰囲気が漂う作品ですが、その中に切ない人間模様や深い愛の姿が織り込まれ、感動的な作品でした。

また、湊にせよ武井にせよ、どうしてアンダーグラウンドな社会に身を投じることになったかという背景がしっかり描き込まれていた点も大変読み応えがありました。
スポンサーサイト

テーマ : ボーイズラブ - ジャンル : 本・雑誌

コメント

一番乗り[s:18240][s:18241]

こんばんは、ミドリです
この度は私のブログに来ていただいてありがとうございました
私も来ちゃいました今日は携帯から…
しかも同じ時期に開設とは嬉しいです
一緒に頑張りましょうね
…しかし、エレニさんのブログはしっかりブログだスゴイ~

すべてはこの夜に、私も最近読みました。
主役カプには正直萌えなかったんですが、武井に惚れました


あ、本題がこんなところにきちゃいましたが、こちらこそ、リンクお願いします。

Re: 一番乗り

ミドリさん、いらっしゃいませ☆
来ていただいてありがとうございます。
リンクの件も了承していただき、ありがとうございました。

> すべてはこの夜に、私も最近読みました。
> 主役カプには正直萌えなかったんですが、武井に惚れました

そうそう武井がいいですよね!遠い目をして海を見つめる武井にやられました。
オヤジ萌えwこの作品は、正直武井カプに持って行かれちゃった感じがします。

ではでは、今後ともよろしくお願いします。また遊びに伺いますね。
お互いがんばりましょう♪
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。